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近年、子どもの近視が増加傾向にあります。近視が進むメカニズムとは。進むと何が起きるのでしょう。何をすればよいのでしょう。その一つ一つにお答えできればと思います。
近視は大まかに分けて2種類あります。
手もとへのピント合わせに使われる目の筋肉がこりかたまってしまうことで、わずかですが、遠くが見えにくくなる近視を「見かけ上の近視 いわゆる仮性近視」といいます。小学校低学年の子どもさんに時折みられます。その場合には、検査の上、保険適用となる調節麻痺薬で治療を行うことがあります。
目の前から後ろ方向の軸(眼軸)が長くなり、図1のように外から入ってくる光の焦点が網膜の手前で合ってしまうのが「軸性近視」で、これが本当の近視です。眼軸が長くなるにつれ、焦点はさらに網膜から離れ、遠くの黒板の文字も見えにくくなります。眼球がわずかずつ変形していくため、眼底にある、見たモノの情報を脳に伝える神経の出口『視神経乳頭』もまた変形します。そのため、軸性近視の眼底は、進行すると眼底検査をすることで確認することもできます。
近視の多くは軸性近視であり、一度伸びた長さは短くならない、とされています。
小学校高学年以上のお子さんの近視は、そのほとんどが軸性近視であるため、軸性近視≒近視として表現します。これまでは「近視になればメガネをかければよい」、または「メガネをかけたので黒板も見えるようになり一安心」、そして「今のメガネだと見えにくくなったので、またメガネを更新すればよい」が一般的な考えでした(メガネをコンタクトレンズと置き換えてもよいです)。
しかし、眼軸が伸び始めると、それを止めることは極めて難しくなります。
また伸びた眼軸を元に戻すこともできません。1mm伸びれば―3D近視化するとされています。もちろんメガネをかければ、度数の強い強度近視の一部を除き、矯正視力1.0は得られるでしょう。
気にかかるのは将来、子どもたちが成人し、40歳を超えた頃から目に起きてくるかもしれない病気のことです。
下の表をご覧ください。
近視度数と眼疾患 | 緑内障 | 網膜剥離 | 近視性黄斑症 |
弱度近視: -0.5~-3D |
2倍 | 3倍 | 14倍 |
中等度近視: -3~-6D |
3倍 | 9倍 | 73倍 |
強度近視: -6D~ |
3倍 | 13倍 | 845倍 |
Haarman.IOVS 2020
弱度の近視であっても、近視のある人は近視のない人と比べて緑内障には2倍、網膜剥離は3倍、近視性黄斑症にいたっては14倍かかりやすくなります。また近視の人が緑内障になったとしても、その初期はメガネやコンタクトレンズをすれば、良好な矯正視力が得られるために、緑内障による視野障害があっても気づかないのです。
近年、裸眼視力が1.0未満に低下した児童生徒の割合が増えていると報告されています(図2)。
2010年以降になって家庭用Wi-Fiの高速大容量化が進み、動画視聴がスムーズになりました。
また、令和3年度に初めて全国規模で行われた文部科学省による近視実態調査では、屈折の度数を測定しています(参考1)。数値の表記が「―:マイナス」は近視、「+:プラス」ならば遠視となります。
つまり、小学1年生から近視化が始まり、学年が上がるにつれて近視が強くなる傾向にあります。
【参考1】
『令和3年度 児童生徒の近視実態調査 調査結果報告書』
https://www.mext.go.jp/content/20220622-mxt_kenshoku-000013234_1.pdf
【参考2】
『The Complications of Myopia: A Review and Meta-Analysis』
https://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2765517
近視になりにくいように、また、近視が進みにくいように、まずは、子どもたちの周りの環境を整えておくことが大切です。以下のような行動を普段からしていないか、まずは生活を見直してみましょう。1つでも当てはまっていたら要注意です。
上記のNG行動を踏まえ、近視を抑制するための行動をまずは実践しましょう。 近視は、進行を完全に止めることは困難ですが、その進行を抑制することは可能です。
当院では、日本眼科医会発行の『ギガっこ デジたん!アクセスカード』(通称:近視マンカード)を配付中です。カードにある二次元コードをスマホやタブレットで読み込めば、近視の進行を遅らせる可能性のある方法を知ることができます。
©2022 日本眼科医会
シンガポールで行われた研究で、低濃度のアトロピン点眼治療を行うことにより、子どもの近視進行が抑制された、との報告がありました。これにならって、日本でも同様の研究が行われており、その結果の公表が待たれます。研究をもとに保険適用治療となるか否かは定かではありません。現状は自費診療です。ただし点眼による治療ですので日本でも多くの眼科で導入されるかもしれません。
オルソケラトロジーをご存知でしょうか。ハードコンタクトレンズの1種で、就寝中に装用し、そのコンタクトレンズの形状で角膜をわずかに変形させることにより、近視を“一時的に”矯正する方法です。“一時的に”というのも、このコンタクトレンズの使用を中止すると、しばらくすれば、もとの屈折度にもどるためです。
ところで、2017年にオルソケラトロジーのガイドラインが改定され、それまで使用は適用外とされていた未成年者にも「慎重処方」という条件をつけて、処方が可能となりました。そしてこのオルソケラトロジーには、近視の矯正だけでなく、近視の進行自体を抑制する効果があることが、近年の研究でわかってきました。
この「慎重処方」という規定がありながらも、小学生など低年齢で処方する例は少なくありません。処方と使用に際しては、間違いのない装用目的とその方法、正しいレンズの管理方法と確実な定期検査、重い角膜感染症などの合併症リスクなどについて、使用者と保護者は、カウンセリングを受け、十分に理解する必要があります。もちろん処方する側の眼科医も、十分に知識を持ち理解したうえで処方しなければなりません。
いわゆる遠近両用ソフトコンタクトレンズに近い、加入度(遠くを見る度数と近くを見る度数の差)のあるソフトコンタクトレンズを装用して近視進行を抑制しようという考えから開発されているコンタクトレンズです。特に日本では、+0.5Dという低加入度のソフトコンタクトレンズを用いて臨床試験が行われました。その結果、子どもにおいて近視進行抑制の効果があったとのことです。もちろん、オルソケラトロジーと同じく、使用方法や管理、安全性について使用者、保護者そして処方する眼科医がともに情報を共有しておく必要があるでしょう。
以上の3つの治療について、現状では未だどこの眼科クリニックでも可能な治療とは言えません。ただし、これら多種類に渡る近視治療に関わるエキスパートの眼科医は、その治療について使用者ならびに保護者に詳しく説明し、カウンセリングを経て、それぞれのキャラクターを考慮して適切な治療法を選択されます。時には治療をおすすめしないこともありえます。
(当院では、これら治療についてご相談させていただくことは可能ですが、低濃度アトロピン点眼治療を除き、治療の導入には至っておりません。ご了承ください。)
小学校低学年から、近視の治療を始めると効果的ともされています。ただ「眼鏡をかけさせたくない」ためとはいえ、用法を守らず安全性をないがしろにしていると、様々な合併症や副作用などに遭遇する恐れがあります。 近視に関しては、眼科専門医とよく相談し、現状から考えられる適切な対処法を一緒に考えていくことをおすすめします。