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近年、子どもの近視が増加傾向にあります。近視の子どもはなぜ増えているのでしょうか。近視は昔からあったはずなのに、どうして止められないのでしょう。近視があると将来何が起きるのでしょうか。何をすれば近視の進みをとめる、ゆるめることができるのでしょうか。そのひとつひとつを紐解いていきましょう。

近視とは手もとや近くは見えますが、遠方がみえにくくなる「屈折異常」の状態をいいます。小中学校で教室の前のほうにある黒板に書かれた白色の文字が、後ろのほうからどれだけハッキリと読めるのか、がひとつの指標となります。
手もとへのピント合わせに使われる目の筋肉がこりかたまってしまうことで、やや遠くが見えにくくなる近視を「見かけ上の近視:仮性近視」と呼ぶ場合があります。小学校低学年の子どもさんに時折みられます。その場合には、精査の上、保険適用となる調節麻痺薬で治療を受けることになるかもしれません。
黒目(角膜)の頂点から目の底(眼底の網膜)までの長さ、つまり眼球が前後方向に長い(眼軸長が長い)と、角膜や水晶体の屈折力の強さによって、遠方からきた光線が網膜の手前で焦点を結んでしまいます(図1)。これが軸性近視です。遠くのモノがぼやけてみえてしまうことから、眼鏡による矯正が必要となります。眼底は近視性の変化によって視神経乳頭の形状に変化がみられます。近視の多くは軸性近視であり、一度伸びたら元に戻ることはないとされています。

裸眼視力が1.0未満の子どもの割合は増加中令和5年度の文部科学省の学校保健統計調査結果をみると、裸眼視力(眼鏡をかけない視力)が1.0未満に低下している割合は、幼稚園22.92%、小学校37.79%、中学校60.93%、高等学校67.80%となっています。

グラフにもあるように、裸眼視力の低下は多少の変動はあるものの、検査が今のスタイルとなった1979年以来、右肩上がりに増加していて、この多くが近視によるものと推定されています(図2:令和5年度 学校保健統計調査)。実際、小中学生の世代で眼軸長が伸びることが多く、眼鏡によって矯正できる単純近視がそのほとんどを占めます。
令和3年~5年まで行われた文部科学省の近視実態調査では近視の割合
文部科学省:令和5年度 児童生徒の近視実態調査 事業結果報告書
柏井:日本の眼科. 2025,96,116-117
中学生の眼軸長は、大人とほぼ同じにまた、先の近視実態調査では、学年が進むにつれて近視が進行し眼軸が伸びる傾向にあり、中学生ですでに大人の平均眼軸長と、その平均値は肩を並べる勢いとなっています。裸眼視力0.3未満の割合は小学生から中学生にかけて増加。女子に顕著にみられたとのことです。
近視になる原因は近視はアジア人に多く、両親、もしくはどちらかの親が近視であればその子どもも近視になりやすいとされています(図3)。近視の発症と進行に関わる要因には、この遺伝的な要因と環境に関わる要因の両方が複雑に絡み合っているとされています。

近視になる環境とは環境の要因としては「屋外、屋内」「明るさ」「近さ、遠さ」「時間の長さ」「教育」「大都市圏、地方」をはじめ多くの因子が関与するのではないかといわれています。そこで、これらの単語を使って文章を書いてみましょう。
「教育環境の良い大都市に住み、外より暗い教室で、しっかり勉強するために読み書きやタブレットを近い距離でみて、ゲームや動画は家の中で数時間、手元の端末で操作する。」
何か思い当たるフシはありませんか。全国と比べても大阪の子どもたちはゲームをする時間が長いのです【図4】。
■ 教育と近視
環境における近視の進行に関わる要因は、「教育」であり、その中でも「近業」の関与が深いとされています。「近業」とはまさに手元の作業で、目から20㎝~30㎝未満の距離で読書をしたり、書字をしたりすることになります。そのために、昭和初期の教育現場では、しっかり腕をのばして読書するほか、教科書の文字フォントに工夫がなされていました。
21世紀になると「近業」は端末やスマートフォンへの書き込み、文字を読む、動画を見る、ゲームをすることが含まれます。また近視の割合は地方に住む子どもに比べて、大都市圏に住む子どもに多いとされています。その理由として、大都市圏には、教育への関心度が高い保護者が多いことも因子の一つかもしれません。課題は、屋内、特に家庭内での端末の扱い方です。スマホの使用やゲームで遊ぶ子どもたちは、その大半が保護者との間で、端末に関するルールを決めていません。特に小学校入学時にしっかりと子どもと端末の使い方について約束を交わしましょう。【図5】
大都市圏、例えば首都圏をみても小学校男子女子ともに東京23区と東京都の西側に位置する市部を比べると、23区の方が視力1.0未満の児童の割合が多くみえます。【図6】
■ コロナ禍と近視
令和2年になって、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大がはじまりました。この時、学校の休業と外出自粛によって、外出の機会が減少したうえに、ゲーム、SNS、動画視聴に講じていたと、当時のアンケート調査が記していました。特に小学校低学年や未就学児(幼稚園、保育所の年長さん等)に近視の発症が増加しており、ゲームや動画を見るなどして近くを長時間見続けていることがリスクとして挙げられ、屋外での活動が少なかったことが近視の発症と進行を招いた原因ではないかと指摘されています。
■ 近視とデジタル
紙の教科書が完全になくなることはないでしょう。ただ、これまで通りの使い方ではなく、デジタル教科書との併用が主流化するとみられています。
児童生徒向けの一人一台端末と高速大容量ネットワーク環境の一体的な整備「GIGAスクール構想」が2020年から始まり、3年以内にほぼすべての公立小中学校に端末が備えられました。教師の方々は、これまでの黒板に書いて教える立場から、児童生徒等が主体的に学ぶための助言者に変わりつつあります。では児童生徒が自身で管理することになる一人一台の端末は、目の健康にどういった影響を及ぼすのでしょうか。そしてどのような対策ができるのでしょう。
すすむ近視をなんとか止めよう!子どもたちが端末を使う時、背筋を伸ばしイスに深く座り、目と端末の画面の距離を30cm以上離すことが基本形。照明や窓からの光が写り込まないような工夫も必要です。また30分端末を見たら1回は視線を端末から離して、遠くに目を向けましょう。例えば窓から見えるポプラの木のてっぺんに視線を向けて「20」をゆっくり数えましょう。 しかし、その全てを完璧にできるわけではありません。画面に近づいて見たり、背中を曲げたりと姿勢が整わない場合もあります。そのために目の疲れから「デジタル眼精疲労」や、目の乾き「ドライアイ」が引き起こされる恐れがあります。姿勢を改善し目と画面の距離を一定に保つにはキーボード入力が欠かせません。また、目が乾きにくいように、まばたきを頻回にすることも大切です。端末を見つつ、自分の健康について気を配り、偏りのない情報を取捨選択できる、ヘルスリテラシーも並行して獲得していくことも逃れられないことです。
近視の進みを予防するポイントは外で過ごす時間一方、近視の進行をおさえるためには、太陽光のもとで1日2時間程度過ごせばよい(2時間に至らなくてもよい、ビシビシ2時間でなく、だいたい“そのくらい”でもよい)、とされています。直射日光のもとに行かず、たとえ木陰で過ごして照度として1000ルクスは確保されれば、その近視抑制効果は期待されます。もちろん、熱中症対策や紫外線対策を忘れてはなりません。
【児童生徒の近視実態調査事業 子供の目の健康を守るための啓発資料(児童生徒向け)】
【児童生徒の近視実態調査事業 啓発資料】
【図8】
テレビは見てもかまわない!?近視について興味深い話があります。「パソコンばかりしていると目を悪くする」や「スマホばっかりしていると視力が落ちる」は最近も良く耳にするフレーズです。その前は「テレビばかり・・・」、もっと前は「暗いところで本を読む・・・」という長い歴史があります。そしてテレビを除けば、すべてが近視の要因である「近業」に関わっていることがわかります。なお、テレビの視聴は近視の進行に関与しない可能性が高い、といくつかの論文で報告されています。つまり、テレビばっかり見ていても、距離がある程度確保できていれば、近視の要因にはなりにくい、と言えるのでは…。考えようによっては、動画視聴もゲームもテレビ画面でみたほうがいいのかもしれません。ただし、幼い子どもたちはどうしてもTV画面に近づいて見ようとします。そこは少しでもTV画面から離れて見ることを習慣づけましょう。

近視の進行をおさえるためにできること近視になりにくいように、また近視が進みにくいように、まずは、子どもたちの周りの環境を整えておくことが大切です。以下のような行動を普段からしていないか、まずは生活を見直してみましょう。1つでも当てはまっていたら要注意です。

上記のNG行動を踏まえ、近視を抑制するための行動をまずは実践しましょう。 近視は、進行を完全に止めることは困難ですが、その進行を抑制することは可能です。
■ 近視への対処法
■ 対処法をさらに知りたい
当院では、日本眼科医会発行の「ギガっこ デジたん!」アクセスカード(通称:近視マンカード)を配布中です。カードにある二次元コードをスマホやタブレット端末で読み込めば、近視の進行をおさえる情報をいっぱい見ることができます。
また、日本眼科医会にはYouTubeチャンネルがあります。そこでは、近視に限らず、コンタクトレンズを扱う注意点、また緑内障に関わる情報もあります。
近視の進行抑制治療について遠くが見えにくい近視。2050年には、世界人口の約半数が近視になるとの予想があります。近視は、メガネやコンタクトレンズで矯正し、よく見えるようにしておけばよい、という考え方がほんの数年前まで多勢を占めていました。ところが、近視の人は、緑内障や白内障、網膜剥離や近視性黄斑変性など、視力に影響を与える眼疾患と関係性があり、強い近視ほどこれらの眼疾患になる可能性が高くなる、とされています。
近視の進行予防には「1日2時間程度の外遊び」、「目と端末を30cm離しての操作」、「端末を30分見たら1回は目を離して遠くを20秒見る」が薦められています。
それでも近視が進む場合、自由診療(健康保険の適用外)ながら以下のいくつかの治療が導入され、一定の効果が得られているとのことです。ただし、そのいずれの治療でも近視の進行を抑えることを目標としており、近視を治すことはできません。
当院では低濃度アトロピン点眼治療を中心に近視の進行抑制治療を行っています。また2025年春からは、価格変動の激しい輸入品から、日本で治験が行われた低濃度アトロピン治療にスイッチしております。
■オルソケラトロジー
オルソケラトロジーをご存知でしょうか。ハードコンタクトレンズの1種で、就寝中に装用し、そのコンタクトレンズの形状で角膜をわずかに変形させることにより、近視を“一時的に”矯正する方法です。“一時的に”というのも、このコンタクトレンズの使用を中止すると、しばらくすれば、もとの屈折度にもどるためです。
ところで、2017年にオルソケラトロジーのガイドラインが改定され、それまで使用は適用外とされていた未成年者にも「慎重処方」という条件をつけて、処方が可能となりました。そしてこのオルソケラトロジーには、近視の矯正だけでなく、近視の進行自体を抑制する効果があることが、近年の研究でわかってきました。
この「慎重処方」という規定がありながらも、小学生など低年齢で処方する例は少なくありません。処方と使用に際しては、間違いのない装用目的とその方法、正しいレンズの管理方法と確実な定期検査、重い角膜感染症などの合併症リスクなどについて、使用者と保護者は、カウンセリングを受け、十分に理解する必要があります。もちろん処方する側の眼科医も、十分に知識を持ち理解したうえで処方しなければなりません。
■低加入度ソフトコンタクトレンズ
いわゆる遠近両用ソフトコンタクトレンズに近い、加入度(遠くを見る度数と近くを見る度数の差)のあるソフトコンタクトレンズを装用して近視進行を抑制しようという考えから開発されているコンタクトレンズです。特に日本では、+0.5Dという低加入度のソフトコンタクトレンズを用いて臨床試験が行われました。その結果、子どもにおいて近視進行抑制の効果があったとのことです。もちろん、オルソケラトロジーと同じく、使用方法や管理、安全性について使用者、保護者そして処方する眼科医がともに情報を共有しておく必要があるでしょう。
以上の3つの治療について、現状では未だどこの眼科クリニックでも可能な治療とは言えません。ただし、これら多種類に渡る近視治療に関わるエキスパートの眼科医は、その治療について使用者ならびに保護者に詳しく説明し、カウンセリングを経て、それぞれのキャラクターを考慮して適切な治療法を選択されます。時には治療をおすすめしないこともありえます。
(当院では、これらの治療について相談させていただくことは可能ですが、主に低濃度アトロピン点眼治療を行っております。)
小学校低学年から、近視の治療を始めると効果的ともされています。ただ「眼鏡をかけさせたくない」ためとはいえ、用法を守らず安全性をないがしろにしていると、様々な合併症や副作用などに遭遇する恐れがあります。 近視に関しては、眼科専門医とよく相談し、現状から考えられる適切な対処法を一緒に考えていくことをおすすめします。